「現役生活もいつかは終わりが来る…引退した後の人生、どうすればいいんだろう?」
「スポーツ一筋だった自分に、競技以外の道で輝ける場所はあるのだろうか?」
「引退後に苦労する選手の話も聞くけど、成功している人は何が違うんだろう…」
競技に全てを捧げてきたスポーツ選手の皆さんにとって、現役引退後の「セカンドキャリア」は、大きな期待と共に、少なからず不安も伴う人生の大きな岐路です。テレビで活躍する元アスリートがいる一方で、引退後の生活に苦労するケースも報道されることがあり、他人事ではないと感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、引退は終わりではなく、新たな可能性に満ちた第二の人生のスタートです。
この記事では、スポーツ選手が引退後に直面するリアルな現状から、具体的なキャリアの選択肢、そしてセカンドキャリアで成功を掴むための秘訣、さらには実際に輝かしい第二の人生を歩んでいる先輩たちの事例まで、徹底的に深掘りして解説します。引退後のキャリアに不安を感じている現役選手の方も、これからプロを目指す若い世代の方も、そしてそのご家族や関係者の方も、ぜひ最後までご覧いただき、未来を切り拓くためのヒントを見つけてください。
1. スポーツ選手の引退後キャリア:「セカンドキャリア」の現状と課題
華やかなスポットライトを浴びるスポーツ選手。しかし、その競技人生には必ず終わりが訪れます。引退後の新たな人生、「セカンドキャリア」は、希望と共に多くの課題もはらんでいます。まずはそのリアルな現状をしっかりと見つめ、向き合うことから始めましょう。
1-1. セカンドキャリアとは?アスリートにとっての「第二の人生」
「セカンドキャリア」という言葉、最近よく耳にするようになりましたね。スポーツ選手にとってのセカンドキャリアとは、一般的に現役を引退した後の職業生活や人生そのものを広く指します。プロとして契約を結び高額な年俸を得ていた選手も、企業に所属し社員として競技に打ち込んできた選手も、引退すれば「アスリート」という肩書は過去のものとなります。そこから始まる「第二の人生」「第二の職業」がセカンドキャリアなのです。
一般的なビジネスパーソンが転職や定年退職を機にセカンドキャリアを考えるのに対し、スポーツ選手の場合は、その転換点が20代後半から30代前半という比較的若い時期に訪れるのが大きな特徴です。引退後の人生の方が、現役生活よりもずっと長いケースがほとんどなのです。
1-2. 引退の平均年齢「29.9歳」という現実
「自分はまだまだやれる」と思っていても、身体的なピークや契約の問題など、引退のタイミングは様々な要因でやってきます。笹川スポーツ財団がオリンピック出場経験のある選手を対象に行った調査(※1)によると、平均引退年齢は29.9歳というデータが出ています。これは、多くの選手が30歳を目前にして、人生の大きな決断を迫られることを意味します。
引退理由も様々です。同調査では、夏季オリンピック出場経験者の45.5%が「年齢による体力的な問題」を挙げる一方、ほぼ同数の46%が「仕事を優先するため」と回答しています。競技への情熱と、将来の生活設計との間で葛藤するアスリートの姿が垣間見えます。
(※1)出典:笹川スポーツ財団「オリンピアンのキャリアに関する実態調査」
1-3. 生涯年収と引退後の経済的な不安
「スポーツ選手は高収入」というイメージがあるかもしれませんが、それはほんの一握りのトップアスリートの話。多くの選手は、決して盤石な経済基盤を築けるわけではありません。プロ野球を例に見ると、2023年度の全球団選手の年俸平均は約4468万円でしたが、中央値(多くの選手の実感に近い数値)は1600万円です。仮に年俸1600万円を13年以上維持できて、ようやく一般的なサラリーマンの生涯年収(2~3億円)に到達できるかどうか、という厳しい現実があります。
さらに衝撃的なデータもあります。イングランドではプロサッカー選手引退後4年以内に40%が、NFL(アメリカンフットボール)では引退後2年以内に約78%もの選手が自己破産や深刻な経済的困難に陥るという統計もあるのです(※数値は調査により異なります)。日本でも、2021年の現役若手プロ野球選手へのアンケートでは、引退後の生活に不安を感じている選手が66.1%にものぼり、不安要素のトップは「進路(何をやっていけばいいか?)」(82.9%)、次いで「収入面(生活していけるか?)」(53.7%)でした。
だからこそ、現役時代から引退後のキャリアを真剣に考え、準備を始めることが何よりも大切なのです。
1-4. なぜ一部のスポーツ選手は引退後に苦しむのか?キャリアを築けない3つの理由
輝かしい実績を残した選手でさえ、なぜ引退後に苦労してしまうケースがあるのでしょうか。主な理由として以下の3点が挙げられます。
- 「スポーツしかしてこなかった」という経験の偏り:幼い頃から競技一筋の生活を送ってきたため、いざ引退すると「自分に何ができるのか」「何をやりたいのか」が見えなくなってしまうことがあります。社会経験の不足から、自分自身の強みや適性を客観的に把握するのも難しいのです。
- 手厚すぎた現役時代の待遇と一般社会とのギャップ:特にトップ選手は、移動や食事、身の回りのことまでサポートされる環境に慣れてしまい、引退後に一般社会の常識やビジネスマナー、基本的な生活スキル(料理、洗濯など)が欠如していることに直面し、戸惑うことがあります。金銭感覚も現役時代のままでは、あっという間に困窮してしまうでしょう。
- 燃え尽き症候群やメンタルヘルスの問題:長年打ち込んできた目標を失い、燃え尽きたような状態になったり、怪我などで不本意な引退を強いられた場合に精神的に落ち込んだりすることも少なくありません。新たな環境で結果を求められるプレッシャーに耐えられず、心を病んでしまうケースもあります。
これらの課題を乗り越えるためには、早期からの意識改革と準備が不可欠です。
なぜ現役中からセカンドキャリアを考えるべきなのか?
「引退後のことは、引退してから考えればいい」そう思っていませんか?しかし、それは大きなリスクを伴う可能性があります。セカンドキャリアの準備は、早ければ早いほど有利です。
現役中に引退後のキャリアについて考え始めることで、以下のようなメリットがあります。
- 精神的な余裕が生まれる:「引退しても自分にはこれがある」という見通しは、現役生活のプレッシャーを和らげ、競技に集中できる環境を作ります。
- スムーズな移行が可能になる:引退と同時に次のステップへスムーズに移行でき、収入や社会との繋がりが途絶える期間を最小限に抑えられます。
- スキル習得の時間が確保できる:現役中であれば、比較的時間をかけて新しい知識やスキルを学ぶことができます。資格取得の勉強や、ビジネスの基礎学習なども、計画的に進められます。
- 人脈を意識的に広げられる:競技関係者だけでなく、将来のキャリアに繋がりそうな分野の人々とも意識的に交流し、人脈を広げておくことができます。
- デュアルキャリアの可能性:競技と並行して他の仕事や学業に取り組む「デュアルキャリア」を選択することで、引退後の選択肢を増やし、経済的な基盤も築けます。
予期せぬ怪我や戦力外通告など、引退は突然やってくることもあります。その時に慌てないためにも、そして何よりも引退後の長い人生をより豊かで実りあるものにするためにも、現役のうちからセカンドキャリアについて考え、具体的な準備を始めることが、賢明なアスリートの選択と言えるでしょう。
スポーツ選手 引退後のリアルな選択肢7選!経験をどう活かす?
引退後の道は一つではありません。あなたがスポーツを通じて培ってきた経験、スキル、そして情熱は、様々な分野で活かすことができます。ここでは、スポーツ選手が選ぶことの多い代表的なセカンドキャリアの選択肢を7つご紹介します。あなたに合った道はどれでしょうか?
3-1. 指導者(コーチ・監督):競技経験を次世代へ
多くの選手が最初に考えるのが、自身の競技経験を活かして後進を育成する「指導者」の道でしょう。プロチームの監督やコーチ、学校の部活動の顧問、地域のスポーツクラブの指導員など、活躍の場は多岐にわたります。
選手としての実績や技術だけでなく、指導理論、コミュニケーション能力、育成の哲学などが求められます。トップレベルを目指す選手の育成から、子供たちにスポーツの楽しさを伝える役割まで、その使命は様々です。
3-2. チームスタッフ・解説者:スポーツ界への多角的な貢献
直接指導する立場以外にも、スポーツ界に貢献する方法はたくさんあります。所属していたチームや団体の運営スタッフ(広報、営業、マネジメント、スカウトなど)として手腕を振るったり、テレビやラジオ、新聞などで試合解説やコラム執筆を行うスポーツコメンテーターやジャーナリストとして活躍したりする道です。
競技への深い理解と、それを分かりやすく伝える表現力が求められます。
3-3. 一般企業への就職:新たなフィールドでの挑戦
スポーツで培った精神力、目標達成能力、チームワーク、規律性などは、一般企業でも高く評価されるポテンシャルです。
近年は、アスリートのセカンドキャリア採用に積極的な企業も増えています。営業職、企画職、人事職など、様々な職種で元アスリートが活躍しています。
新しい環境で一から学ぶ謙虚さと、スポーツで培ったやり抜く力があれば、未経験の分野でも成功を掴むことは十分に可能です。
3-4. 学校での学び直し:知識と視野を広げる
引退を機に、大学や大学院、専門学校に入学し、新たな知識や専門性を身につける「学び直し」も有意義な選択です。競技に打ち込んできたために十分にできなかった勉強に改めて取り組んだり、セカンドキャリアで目指す分野の専門知識を深めたりします。
スポーツ科学や経営学、教育学などを学び、将来的にスポーツ界やビジネス界で活かすという人もいます。
3-5. 資格取得:専門性を武器にする
セカンドキャリアで特定の専門職を目指すために、資格を取得する道もあります。現役中から計画的に勉強を進め、難関資格に合格する人もいます。
競技経験を活かせる資格としては、柔道整復師、鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、理学療法士、アスレティックトレーナーといった医療・リハビリ・トレーニング関連の国家資格や民間資格が人気です。
その他にも、教員免許、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなど、興味や目標に合わせて様々な資格が考えられます。
3-6. 起業・独立開業:自分のビジョンを形にする
近年、引退後に自身のアイデアや経験を活かして「起業」する元スポーツ選手が増えています。スポーツジムやトレーニング施設の経営、スポーツ関連グッズの開発・販売、健康食品のプロデュース、飲食店経営、コンサルティング業など、その分野は多岐にわたります。
自分のやりたいことを追求でき、成功すれば大きなリターンも期待できるのが魅力ですが、同時に経営に関する知識や資金、そして何よりも事業を軌道に乗せるための強い意志と行動力が求められます。
笹川スポーツ財団の調査では、オリンピック出場経験者の約1割が起業などの自営業で生計を立てているというデータもあります。
3-7. 兼業・デュアルキャリア:現役中からの準備と移行
引退後のキャリアをスムーズにスタートするために、現役中から競技以外の仕事や学業に並行して取り組む「兼業」や「デュアルキャリア」という考え方が注目されています。
例えば、競技を続けながら企業で時短勤務をしたり、オンラインでビジネススキルを学んだり、自身のSNSで情報発信を行ってファンを増やし、それを収益に繋げたりといった形です。
これにより、引退後の収入源の確保や、新しいスキル・人脈の獲得が期待でき、セカンドキャリアへのソフトランディングが可能になります。
4. スポーツ選手がセカンドキャリアで成功するための4つの秘訣
どんな道を選ぶにしても、セカンドキャリアで成功を掴むためには、いくつかの重要な「秘訣」があります。
これらを意識することで、あなたの新たな挑戦はより実りあるものになるでしょう。
4-1. 徹底的な自己分析:「自分だけの強み」を見つけ出す
「自分にはスポーツしかない」と思い込んでいませんか?そんなことはありません。
まずは、現役生活で培ってきた経験を客観的に棚卸しし、あなた自身の「本当の強み」を深く理解することが何よりも大切です。それは、単なる競技スキルや実績だけではありません。
- 目標を設定し、それに向かって地道な努力を継続できる「目標達成能力」
- プレッシャーのかかる場面でも冷静に判断し、実力を発揮できる「精神的な強さ」
- チームメイトやコーチ、関係者と良好な関係を築き、協力し合える「協調性」や「コミュニケーション能力」
- 厳しいトレーニングや規律ある生活を乗り越えてきた「自己管理能力」や「忍耐力」
- チームをまとめ、仲間を鼓舞する「リーダーシップ」
これらの「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」は、どんな分野でも活かせるあなたの大きな財産です。これらの強みを自覚し、次に何をしたいのか、何に情熱を注げるのかをじっくりと考えることが、成功への羅針盤となります。
4-2. 貪欲なスキルアップ:新しい世界で通用する武器を磨く
現役時代にどれほど輝かしい実績を残したとしても、新しい世界では誰もが「新人」です。スポーツで培った強みを活かしつつも、セカンドキャリアで活躍するためには、その分野で必要とされる新しい知識やスキルを貪欲に学び、習得する姿勢が不可欠です。
企業に就職するなら、基本的なPCスキル、ビジネスマナー、業界知識。
起業するなら、経営、財務、マーケティング、法律に関する知識。
指導者になるなら、最新のコーチング理論やスポーツ科学。学ぶべきことはたくさんあります。
本を読む、セミナーに参加する、資格取得を目指す、専門家から教えを請うなど、積極的に行動しましょう。
この「学び続ける力」こそが、あなたを成長させ、新しい世界で通用する武器となるのです。
4-3. 「縁」を力に:人的ネットワークを最大限に活用する
スポーツを通じて出会った指導者、チームメイト、ライバル、スポンサー、ファン、メディア関係者など、あなたが築き上げてきた「人的ネットワーク(人脈)」は、お金では買えない貴重な資産です。セカンドキャリアにおいても、この「縁」を最大限に活用しましょう。
尊敬する先輩や信頼できる指導者にキャリア相談をしたり、同じようにセカンドキャリアで活躍している仲間の話を聞いたりすることで、新たな気づきやチャンスが生まれることがあります。
また、あなたが困ったときに手を差し伸べてくれる人がいるかもしれません。日頃から感謝の気持ちを持って人と接し、良好な関係を大切に育んでおくことが、いざという時にあなたを助ける力となります。
4-4. 視野の拡大:スポーツ以外の世界に飛び込む勇気
「自分はスポーツの世界しか知らないから…」と、新しい分野へ挑戦することに臆病になってしまうのは非常にもったいないことです。
勇気を出して、これまで関わりのなかった世界に目を向け、様々な分野の人々と積極的に交流することで、あなたの視野は驚くほど広がり、新たな可能性が見えてきます。
異業種交流会に参加してみる、ボランティア活動をしてみる、全く新しい趣味を始めてみる。どんなことでも構いません。新しい価値観や情報に触れることで、これまで気づかなかった自分の興味や才能を発見したり、思いがけないキャリアのヒントを得たりすることがあります。
自分の世界を広げることが、セカンドキャリアをより豊かで、よりエキサイティングなものにしてくれるのです。
知っておきたい!スポーツ選手のセカンドキャリア支援制度
「セカンドキャリアって、何から始めればいいんだろう…」「一人で準備するのは不安…」そう感じる方も少なくないでしょう。しかし、心配はいりません。
スポーツ選手のセカンドキャリアは社会的な課題としても認識されており、あなたの新たな挑戦をサポートするための様々な支援制度が存在します。これらを賢く活用しましょう。
5-1. スポーツ庁「スポーツキャリアサポート支援事業」
国もアスリートのキャリア形成を後押ししています。スポーツ庁が推進する「スポーツキャリアサポート支援事業」では、各競技団体と連携し、選手のデュアルキャリア(競技と仕事や学業の両立)形成支援や、引退後のスムーズなキャリア移行をサポートするプログラムなどに取り組んでいます。
アスリートのキャリア相談に乗る専門家(アスリートキャリアコーディネーター)の育成や、選手自身がキャリアについて考えるワークショップや研修会なども開催されています。
5-2. 日本オリンピック委員会(JOC)「アスナビ」
日本オリンピック委員会(JOC)が運営する「アスナビ」は、トップアスリートの就職支援プログラムです。現役アスリートと、彼らを支援したい企業とのマッチングを行い、競技活動を続けながら社員として安定した生活基盤を築けるようサポートしています。
2024年3月時点で、約230社に400人近い選手がこの制度を通じて採用され、競技と仕事の両立を実現しています。企業にとっても、トップアスリートを採用することで社内の活性化やブランドイメージ向上といったメリットがあります。
5-3. 転職サイト・エージェントのスポーツ選手専門サポート
民間の転職市場においても、スポーツ選手のセカンドキャリア支援に特化したサービスが増えています。これらの転職サイトや転職エージェントは、スポーツ経験者が持つ特有の強みや課題を深く理解しており、一般の求人情報だけでなく、アスリート採用に積極的な企業の非公開求人などを紹介してくれることもあります。
キャリアカウンセリングを通じて、あなたの適性や希望に合った仕事を見つける手助けをしてくれるでしょう。応募書類の作成指導や面接対策など、転職活動全般にわたるきめ細やかなサポートも期待できます。
セカンドキャリアで避けたい!よくある失敗の原因と対策
輝かしい未来を描いてスタートしたセカンドキャリアも、残念ながら誰もが成功するわけではありません。ここでは、元スポーツ選手が陥りやすい失敗の原因と、それを避けるための対策について考えてみましょう。他山の石とすることが大切です。
6-1. 「過去の栄光」という名のプライド
現役時代にどれだけ素晴らしい実績を残したとしても、新しい世界では誰もが「一年生」です。しかし、過去の栄光や「元プロ」「元日本代表」といったプライドが邪魔をして、新しい環境で謙虚に学ぶ姿勢を持てなかったり、年下の上司や先輩からの指示を素直に受け入れられなかったりすると、周囲との間に溝が生まれ、孤立してしまうことがあります。過去の実績はリセットし、常に新人としての謙虚さと学ぶ意欲を持つことが、新しい世界で信頼を得るための第一歩です。
6-2. 「知らなかった」では済まされない一般社会の常識
幼い頃から競技中心の生活を送ってきたため、一般社会の常識やビジネスマナー、あるいは基本的なITスキルなどが不足しているケースも少なくありません。
言葉遣いやメールの書き方、名刺交換の方法など、基本的なことが分からず戸惑ったり、知らず知らずのうちに相手に失礼な印象を与えてしまったりすることもあります。
セカンドキャリアを始める前に、社会人としての基礎を学び直す意識を持つことが大切です。書籍やセミナー、あるいは信頼できる人に教えてもらうなど、積極的に知識を吸収しましょう。
6-3. 甘い話と準備不足のビジネス
「元アスリートの知名度を活かせば、簡単に儲かる」といった甘い言葉で共同出資や事業への参加を持ちかけられることもありますが、これには細心の注意が必要です。
特に、自身が詳しくない分野や、経営に関する十分な知識・準備がないままビジネスに手を出すのは非常に危険です。飲食店やアパレルなど、一見華やかに見える業界も競争は激しく、安易な考えで始めると大きな失敗に繋がりかねません。
起業を目指すのであれば、徹底した市場調査、綿密な事業計画、そして経営に関する学習が不可欠です。「うまい話には裏がある」と心得て、慎重な判断を心がけましょう。
先輩たちの輝く道!スポーツ選手のセカンドキャリア成功事例3選
多くの困難を乗り越え、セカンドキャリアで新たな輝きを放っている元アスリートたちがいます。彼らの生き方や考え方は、きっとあなたの道しるべとなるでしょう。ここでは、異なる分野で活躍する3人の素晴らしい事例をご紹介します。
7-1. 内村圭宏さん:JリーガーからITエンジニア、そしてサッカースクール代表へ
元プロサッカー選手の内村圭宏さんは、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌などでFWとして17年間活躍し、多くのファンを魅了しました。
2020年に惜しまれつつ引退。しかし、彼は選手生活の終盤から既に次のステージを見据え、IT業界に強い興味を持ちプログラミングの勉強を始めていました。引退後、その行動力とサッカーで培った人間性が評価され、札幌のIT企業にエンジニアとして新たなキャリアをスタート。
その後、名古屋の企業へ転職し、ITエンジニアとしてのスキルを磨きながら、2022年には地元でサッカースクール「ウッチーサッカースクール」を立ち上げました。現在は、ITエンジニアとサッカースクール代表という二つの顔を持ち、複数のキャリアで情熱を注いでいます。
7-2. 奥村武博さん:元阪神投手、公認会計士としてアスリートを支援
元プロ野球・阪神タイガースの投手だった奥村武博さんのセカンドキャリアは、まさに不屈の精神を体現しています。高校卒業後、1998年に阪神に入団したものの、度重なる怪我に泣き、1軍登板がないまま2001年に若くして現役を引退。その後、飲食店勤務などを経て、一冊の資格ガイドとの出会いをきっかけに、三大国家資格の一つである公認会計士を目指すことを決意します。
それは、想像を絶するほど険しい道のりでした。しかし、そこから9年間という長い歳月を勉強に捧げ、2013年に見事公認会計士試験に合格。現在は、公認会計士として活躍する傍ら、一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構の代表理事を務め、自身の壮絶な経験を基に、スポーツ選手のセカンドキャリア支援に情熱を燃やしています。
7-3. 松本薫さん:柔道金メダリスト、アイスクリームで人々に笑顔を
「野獣」の愛称で日本中に感動を与え、2012年ロンドンオリンピック柔道女子57kg級で金メダル、2016年リオデジャネイロオリンピックで銅メダルを獲得した松本薫さん。
彼女は、結婚・出産を経て2019年に現役を引退した後、なんとアイスクリーム店の店員として新たな道を歩み始めました。きっかけは、現役時代に所属していた企業の社長とのご縁。現在は「Darcy’s(ダシーズ)」というブランドで、「ギルトフリー(罪悪感なく楽しめる)」をコンセプトにした健康的なアイスクリームの開発・販売に携わっています。
店舗での接客から商品開発までこなし、柔道とは全く異なる世界で、食を通じて人々に笑顔と健康を届けるという新しい夢を追いかけています。
まとめ:スポーツ選手の引退後は可能性に満ちている!準備と行動で未来を掴もう
スポーツ選手の引退後の人生、「セカンドキャリア」は、決して暗いものでも、限られたものでもありません。むしろ、あなたが現役生活で培ってきた経験、精神力、そして情熱を、新たなステージで開花させる大きなチャンスなのです。
指導者、スポーツ関連業、一般企業への就職、学び直し、資格取得、そして起業。選択肢は多岐にわたります。大切なのは、引退が現実のものとなる前から、少しずつでも将来について考え、情報を集め、必要な準備を始めること。そして、自分自身の強みを理解し、新しいスキルを学ぶ意欲を持ち、周囲の人々との縁を大切にしながら、勇気を持って一歩を踏み出すことです。
デュアルキャリアという形で、現役中から次の準備を始めるのも賢明な選択でしょう。あなたが選手として見せてくれたように、目標に向かって努力し続けるならば、セカンドキャリアでも必ず道は開けます。
この記事が、あなたの輝かしいセカンドキャリアへの第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。あなたの新たな挑戦を、心から応援しています!
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